2017年2月20日月曜日

『枕詞千年の謎』の『とぶとり』〔002〕

『枕詞千年の謎』の『とぶとり』

「飛鳥の場所」に向かう前に藤村由加著「枕詞千年の謎」(1992)について。

この著者は、ご存知の通り「人麻呂の暗号」で一躍有名になった(女性執筆者四人のペンネーム)。古代朝鮮語で万葉歌が読めるとの売出しでベストセラーになり、その後数冊を執筆、そのうちの一冊である。

万葉歌が多言語であることは知られたことではあったが、誰も試みなかった、ある意味不思議なくらいだが、「歌」の解釈として違った角度から試すことは重要なことであろう。また、古代の日本の状況を考えれば、中国語、朝鮮語等々が渡来する人々によってもたらされたことも自然の流れと思われる。

いやむしろ、DNAハプログループ解析で明らかにされているようにアフリカで誕生した現生人類がアジア大陸を横断し、主に樺太経由で北海道から南下、日本列島に広がっていったと知るなら、文字を持たない人々が中国語(漢字)に限りない憧れを抱いたことは容易に推測される。

朝鮮半島に住む人々も同じく、漢字の知識及びその活用法を知り得て、中国語、朝鮮語、日本語を自由自在に使ったことも想像するに難くない。そんな多言語文化圏が朝鮮半島南部と日本海沿岸部(北九州、山陰、北陸)に発生したのであろう。

むしろ1990年代になるまで試みられなかったのが不思議なくらいである。多言語使用による複数の意味を歌に含めること、文字を活用する人々にとってこんな面白いことはない、これは今も同じである。

藤村由加さんたち著書のすぐ後に、李寧熙著「もう一つの万葉集」が発刊された。代表的な女性歌人、額田王の万葉の世界と称される独特の歌の世界、なんとポルノ歌集だと、笑っちゃいますが、著者によれば天才的な文字の使い方と絶賛された。

今の世界が過去より継続してきたのではなく、離合・集散を繰り返し、正・反・合の歴史的過程を経ているものであり、これからもそうである。グローバリゼーションは、かつてと違い地球規模での多言語文化圏を生み出そうとしている。全ての事が繰り返される。

前置きが長すぎる、とやや自嘲気味に述べて、本題に・・・。


枕詞:とぶとり


「枕詞千年の謎」の第二章に、「とぶとり」があった。概略は以下の通り。

・「明日香」=「明日・香」と区切る。「香()」は場所を示す「明日の地」

・「明日」=「翌日」=「翼日」「明日」は「飛ぶ鳥」に関係する。

・「二つの飛鳥」=「明日香」、「安宿(河内)」 
 飛鳥川の東岸「朝」古代朝鮮語[アチャ()]→アサアス。

・「遠飛鳥」「近飛鳥」:通説は水齒別命の御所(河内多治比の柴垣宮)中心から
 の距離であるが、根拠なし。

「はなれるー遠」、「くっつくー近」鳥の特徴(翼を拡げる/閉じる)

・「遠飛鳥」「明日の飛鳥」、「近飛鳥」「今日の飛鳥」
 古事記原文「今日」「明日」の記述より。

・「遠」「近」「今日」「明日」等対立概念の繰返し。
 「翼」一対で機能する、両立してこそ継続する。

「アスカ」の「カ」を「場所()」と読んでいる。素直に読めばそうである。「ア・スカ」はない。古事記原文の「明日」に注目は、矢張りか、と思う。通説の距離は一刀両断で切捨て、結構なことです。

対立概念の記述はきちんと読まれてる感じがする。短い説話の中に対立概念の両立をみる、この読み方は参考とすべき。それまでに気付かれなかった真の意味が浮かび上がって来る。文章は行間を読むこと、大切なことと思う。

前記で
「飛鳥」=「隼」=「隼人」=「曾婆訶理」として古事記の事件と関連付けた。藤村由加さんにはその発想はなかったようである。「はなれるー遠」、「くっつくー近」と読まれたこと、この説話のキーワードである。

世界に誇るべき文化遺産、万葉集と古事記、多様な人々が多様な言語で激動の世界を記述した。それを素直に読み下していくことが大切である。道半ばと知って愕然としながら、少しの間、読み下してみよう。

…全体を通しては「古事記新釈」を参照願う。